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脳梗塞に対するエクソソームの効果とは?期待できる作用や効果について解説

脳梗塞は、脳血管が詰まることによって引き起こされる疾病です。脳梗塞は、意外と身近な因子で誘発される事があり注意が必要です。そんな脳梗塞では、現在エクソソーム治療という画期的な治療法が期待されています。

この記事では、エクソソーム治療の効果や注意点について脳梗塞との関係を踏まえながら徹底解説します。ぜひ参考にしてみてください。

脳梗塞とは

はじめに、脳梗塞とは何かを解説します。厚生労働省のガイドラインでは、脳梗塞は以下のように定義されています。

脳血管障害(脳卒中)には、脳の血管が詰まる脳梗塞と脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。いずれも高血圧が最大の原因です。高血圧が長く続くと、動脈硬化が進行し、やがて脳の血管が詰まって脳梗塞になります。高血圧の程度が強い場合、脳の血管が破れて脳出血になったり、また脳の血管の一部分に動脈瘤ができて破裂してくも膜下出血になります。これらの疾病を脳血管障害(脳卒中)といいます。

引用元:厚生労働省公式HP

ここからもわかるように、脳梗塞は脳血管障害の1つです。

では、脳梗塞の具体的な原因、症状にはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれ順に解説していきます。

脳梗塞の原因

脳梗塞を発症する原因には、主に以下の危険因子があります。

  • 高血圧
  • 不整脈(心房細動)
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 肥満

これらの因子の中でも、特に高血圧が最も危険な因子です。なぜなら、高血圧は動脈硬化を進行させ、いずれ脳の血管を詰まらせる恐れがあるからです。この状態が、いわゆる脳梗塞となります。

また、メタボリックシンドロームも脳梗塞の重要な危険因子の1つといえるでしょう。これらの因子は、食生活を変えることで改善する事があります。今一度、生活習慣を見直すようにしましょう。

脳梗塞の症状

脳梗塞の主な症状は以下のとおりです。

  • 頭痛
  • めまい
  • 舌のもつれ
  • 手足のしびれ

この中でも、片側の手足が痺れて動かしづらい、顔の片側が痺れて動きにくい、呂律が回らず喋りにくいといった症状が、脳梗塞の典型的な前ぶれとなります。

いわゆる、「腕」「顔」「会話」の障害です。これらの症状が見られたら、脳梗塞の可能性があるので、直ちに救急車を呼んで医療機関を尋ねるようにしましょう。間違っても自分で車などを運転しないように気をつけてください。

エクソソームの効果とは

そんな脳梗塞に関して、間葉系幹細胞(Mensenchymal stem cell: MSC)のエクソソームが治療に効果があるといわれています。MSCとは、人間の身体に備わっている体性幹細胞で、さまざまな種類の細胞に分化すると言われています。骨髄、歯髄、脂肪、胎盤などに存在し、多様な細胞に変化することができる性質から、再生医療での研究や活用がすすめられています。

さらに、MSCを培養することで得られるエクソソームは、MSCそのものと同様に、傷ついた組織の修復や、疾患の治療効果を持つことが分かってきています。
脳梗塞を含む脳卒中においても、MSC由来のエクソソームによる神経細胞の修復や神経障害の改善に効果が期待されています。

引用元:国立がん研究センター特集

では、具体的にエクソソームとは何か、定義や効果、材料の観点から深掘りしていきます。

エクソソームとは

そもそもエクソソームとは、細胞から分泌される直径およそ50〜150nmの顆粒状物質です。表面には脂質やタンパク質を含み、内部には核酸(mRNA、DNAなど)やタンパク質を含んでいます。

エクソソームは、細胞内にできた膜小胞が、細胞外に放出される事で作られます。一般的にエクソソームの表面には、細胞膜由来の成分が含まれ、内部には放出前の細胞の特徴が含まれています。

そのため、MSC(間葉系幹細胞)のエクソソームには、MSCと同様の治療効果が備わっていると期待されています。結果的に、幅広い疾患の細胞治療としてMSCが分泌するエクソソームに注目が集まっているのです。

エクソソームに期待できるさまざまな効果

エクソソームを利用することで、さまざまな疾病の診断や治療の可能性が期待されています。

先述したように、エクソソームには分泌される前の細胞の特徴を反映しています。もし病気がある場合には、その病気の特長を持った細胞から分泌されたエクソソームが、血流にのって全身に存在することになります。そのため、血液の検査などを通して、エクソソームが疾病の診断に有用といわれているのです。

また、エクソソームが物質を安定的に輸送するという機能に着目し、ドラックデリバリーシステム的な治療方法も期待されています。

このように、エクソソームの持つ細胞間情報伝達機能によって、それを利用した診断や治療に大きな可能性があるのです。

エクソソームの由来

脳梗塞の治療に使われるエクソソームは、ヒトの細胞を培養して抽出されます。その培養元として、主に以下が挙げられます。

  • 脂肪由来
  • 臍帯由来
  • 歯髄由来

脂肪由来のエクソソームは、人間の脂肪組織にある体性幹細胞に由来したものです。脂肪由来の体性幹細胞は比較的容易に採取でき、多くのクリニックで使用されています。また、他の部位由来のエクソソームと比較して、安全性が高く効果も出やすいです。一般的に、皮膚の創傷に効果が高く、肌トラブルの改善などの美容での効果が期待されています。

臍帯由来のエクソソームは、へその緒に含まれる幹細胞に由来したものです。一般的に、血液系の疾患や全身的な健康改善・疾患治療に使用されています。

歯髄由来のエクソソームは、人間の歯の中心神経部分の幹細胞に由来したものです。歯髄は頑丈なエナメル質に保護されているため、質の良い幹細胞を採取することができます。歯髄由来のエクソソームは、神経系の修復・再生に効果的です。そのため、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳梗塞などの神経系の疾患に有効であると考えられています。

エクソソームの脳への働き

それでは、エクソソームは脳にどのような効果があるのでしょうか。この記事では、以下の4つの働きを紹介します。

  • 脳細胞の再生
  • 脳梗塞の後遺症の改善
  • パーキンソン病の改善
  • アルツハイマー型認知症の改善

それぞれ詳しく解説します。

脳細胞の再生

脳梗塞で損傷した脳細胞は、治療なしでは元に戻ることはありません。しかし、エクソソームを使った治療法では、障害された脳細胞を再生する効果が期待できることから、実際に臨床で応用されています。

しかし、現在は保険適用外で高額な自費治療となってしまうのがデメリットです。

参照論文:Yuji U, Pleiotropic Effects of Exosomes as a Therapy for Stroke Recovery, Int J Mol Sci. 2020 Sep 20;21(18)

脳梗塞の後遺症の改善

先述したように脳梗塞で損傷した脳細胞は、部分的に再生することが論文で発表されています。エクソソームを含む細胞分泌物(セクレトーム)は、この再生を促し運動機能を回復させます。

その結果、後遺症を軽減させる可能性が期待されているのです。

パーキンソン病の改善

エクソソームを利用した治療には、パーキンソン病の改善も期待できます。

そもそもパーキンソン病とは、神経伝達物質であるドパミンを生成する神経細胞が脳の異常により変性・脱落することで、ドパミン産生が減少することで発症します。

セクレトームが持っている免疫調整・神経保護作用などの機能が神経細胞を保護し、ドパミンの分泌を正常に戻します。その結果、パーキンソン病が改善するというわけです。

アルツハイマー型認知症の改善

近年では、ゆっくりと症状が悪化するアルツハイマー病のような神経系の難病にも、エクソソーム治療が効果的といわれています。

米国の有名病院からも、論文が掲載されているので、気になる方はチェックしてみてください。

Nathan P Staff, Mesenchymal Stromal Cell Therapies for Neurodegenerative Diseases. Mayo Clin Proc. 2019, 94, 892-905.

エクソソームによる脳梗塞などの治療に関する注意点

そんなエクソソームによる治療ですが、注意点もあります。ここでは、以下の2つの注意点を紹介します。

  • 治療できる医療機関が限られている
  • 自由診療のため治療費が高額

それぞれ詳しくみていきましょう。

治療できる医療機関が限られている

はじめに、治療できる医療機関が限られていることです。徐々に臨床治療を拡大させているエクソソーム治療ですが、現時点では施術可能な医療機関が限られています。

治療を検討中の方は、医療機関に事前に確認を取ると良いでしょう。

自由診療のため治療費が高額

2つ目は、自由診療のため治療費が高額であることです。

先述したように、エクソソーム治療は保険適用外となっています。そのため、他の施術と比較して費用も高額です。医療機関によって価格も異なりますが、1回あたり数十万円かかるクリニックもあります。

費用と治療効果を検討して、実施を決めるようにしましょう。

まとめ

この記事では、脳梗塞のエクソソーム治療について紹介しました。脳梗塞は、高血圧や心臓病の方に要注意の疾病です。また、脳梗塞は死に繋がることもあり、事前に気をつけたい疾病ともいえるでしょう。

そんな脳梗塞の治療法の1つに、エクソソームを使ったものがあります。近年急激に研究されている治療法であり、臨床でも使われ始めています。

この記事を参考に、脳梗塞について今一度向き合うようにしましょう。みなさんが健康的な毎日を送れることを祈っています。

記事監修

点滴療法研究会マスターズクラブ(会長:国際統合医療教育センター所長・元杏林大学教授 柳澤厚生)は最新のエビデンスに基づいた点滴療法を提供する医師・歯科医師・獣医師を会員とするグループです。

欧米では科学的に根拠のある様々な点滴療法が代替統合医療・アンチエイジング医療の現場で広く行われています。高濃度ビタミンC点滴療法は米国国立衛生研究所(NIH)や国立癌研究所(NCI)が注目し、カンザス大学やジェファーソン大学では卵巣癌、子宮ガン、悪性リンパ腫の患者について臨床研究が進行しています。

キレーション療法はNIH代替医療部門でTACT Studyと呼ばれる狭心症・心筋梗塞に対する臨床研究を、グルタチオン療法は南フロリダ大学でパーキンソン病に対する臨床研究が行われています。キレーション療法は米国で年間100万件以上実施され、高濃度ビタミンC点滴療法は1万人以上の医師が癌治療に採用しています。

私たち点滴療法研究会マスターズクラブの会員は、最先端の点滴療法を提供できるように最新の医学情報を学び、常に患者様が安全に点滴療法が受けられるよう技術を磨いています。

※当サイトの情報は点滴療法研究会の全体で監修されており、会長医師一人の意見によるものではございません。

会長の医師プロフィール

経歴

杏林大学医学部卒、同大学院修了。
医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。

詳しい経歴や医師の想いについては、医師のプロフィールのページをご覧ください。

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