最新技術のエクソソームとは?病気との関係や働きを徹底解説!
最新の技術で注目を集めているエクソソームについて、病気との関係や働きについて徹底解説します。エクソソームは、細胞内に存在する小胞体の一種で、細胞外に放出されることで、様々な役割を果たすことがわかっています。
本記事では、エクソソームとはどのようなものか、どのように作られるのか、そしてどのような働きがあるかを詳しく解説します。
エクソソームとは?
エクソソームは、小さな細胞外小胞体のことで、細胞内で形成され、細胞外に放出されることが知られています。エクソソームは、生体物質の排泄、細胞間相互作用、免疫応答、炎症反応などに関与し、細胞外小胞体の一種として注目を集めています。
プロテイン、mRNA、miRNAなどの生体物質を含むエクソソームは、多くの種類の細胞で生成されることがわかっており、機能は細胞の種類、細胞の状態、環境条件などによって異なります。
参照元:東京都健康長寿医療センター研究所
エクソソームの作られ方
エクソソームは、細胞の内側で形成されます。
細胞膜内側の小胞と呼ばれる膜小体には、mRNA、miRNA、タンパク質、脂質、糖質、DNAなどが含まれます。小胞体を形成して細胞膜に移動する過程で、小胞体は外側に向かって膨らみ始めます。細胞膜に届いた小胞体は、エクソソームとなり、細胞外へ放出されます。
エクソソームの働き
エクソソームは、様々な働きを持っています。細胞外に放出されたエクソソームは、他の細胞に取り込まれて影響を与えたり、細胞と細胞の相互作用や信号伝達に関与します。
また、血液中に存在するエクソソームは、元の細胞の情報や特徴を持っており、他の細胞に影響を与えることができるため、疾患の診断や治療に応用されることが期待されています。
エクソソームと幹細胞培養液の違い
最新技術の一つであるエクソソームが注目を集めている一方、類似した治療法である幹細胞培養液を応用した治療法も同様に注目されており、エイジングケアや美容医療分野でも利用されるようになっています。
それでは、エクソソームと幹細胞培養液の違いについて解説していきましょう。
幹細胞培養液とは
幹細胞培養液(もしくは幹細胞培養上清)は、ヒト由来の幹細胞を培養する際にできる上澄み液のことで、細胞自体を増殖させたり、細胞が健康的に成長できるような環境を整える役割を担っています。幹細胞を取り扱う上で欠かすことができない液体であり、細胞の増殖や形成に必要な栄養素、EGFやIGF-1をはじめとする500種類以上にも及ぶさまざまなサイトカイン、ケモカインなどの生理活性物質、脂質、核酸などなどが含まれています。
一般的に、医療・美容分野で利用されることが多く、機能性化粧品などにも配合されることがあります。
エクソソームと幹細胞培養液の違い
「幹細胞培養液」はエクソソームと同じような表現で使われることが多くあります。しかし、実際これら二つには大きな違いがあります。
エクソソームは幹細胞培養液にも含まれています。一方で、幹細胞培養液には、先述の通りエクソソーム以外の成分もたくさん含まれており、エクソソームが主成分ではありません。
幹細胞培養液の製剤は、その成分の内容にバラつきがあり、様々な有効成分のほかに不純物も含まれることがあります。それらの不純物は有益な効果はありませんが、一般的には人体に無害であると考えられています。
エクソソームの製剤は、幹細胞培養液のなかからエクソソームを抽出して作られます。ただし、エクソソームのみを100%抽出する技術はまだ限定的なため、「エクソソームが多い幹細胞培養液」を「エクソソーム」という名称で使用することもあります。その場合でも、エクソソームの含有量が多い製剤であれば、エクソソームの効果は十分に発揮されます。
エクソソームと病気の関係
エクソソームは、情報伝達機能を持つ細胞外小体として、病気との関係が注目されています。ここでは、エクソソームと癌・ウイルス感染・疾患バイオマーカー・組織修復の関係について説明します。
エクソソームと癌の関係
がん細胞から放出されたエクソソームが特定のマイクロ RNAを他の細胞に供給することで、がんの増殖や転移に関与することが報告されています。
また、特定のマイクロRNAががんの早期段階で発現するとエクソソームを介して血液中に放出されます。その現象を活用して、血液中のマイクロRNAの量を測定することで、がんの早期発見や再発の診断法に応用できるのではないかと期待されています。
ロート製薬株式会社との共同研究を行っている大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞が産生するエクソソーム等の液性因子を介して、がんの免疫チェックポイント阻害薬によって誘発される1型糖尿病の発症を抑制することを発見しました。
これまでがんの免疫疾患に付随して1型糖尿病が起こる場合の効果的な補助療法は分かっていませんでした。しかし、この研究によって、間葉系幹細胞が産生するエクソソームなどの液性因子を通じて、免疫チェックポイント阻害薬によって誘発される1型糖尿病の発症を抑制することが発見されました。
この成果は、がん免疫療法に関連した自己免疫疾患に対する、有効な補完的な治療法の開発に大きな進展をもたらす可能性があります。
また、この研究は、免疫チェックポイント阻害薬の副作用として発症する1型糖尿病の治療だけでなく、間葉系幹細胞を利用した他の治療法への応用も期待されています。
参照元:リソウ
エクソソームとウイルス感染の関係
熊本大学の大学院生命科学研究部教授である押海 裕之氏の行った研究で、ウイルス感染時の自然免疫応答におけるエクソソームの役割を調査しました。
その結果、ウイルスはエクソソームを介して宿主の自然免疫を制御する可能性が示唆されています。一方、エクソソームは宿主の自然免疫応答にも関与していることがわかりました。
さらに、HBV感染した肝細胞から放出されるエクソソームにはウイルス由来のRNAが含まれており、これが宿主の自然免疫によって認識されることが明らかになりました。これは、エクソソームによる細胞間の情報伝達が宿主にとっても重要な役割を果たしていることを示しています。
この発見から、将来的にエクソソームを人工的に制御することで、感染症のコントロールに役立つ新しい治療法や薬剤を開発できる可能性があることが示唆されています。
参照元:エクソソームによる自然免疫制御の新規メカニズム解明 押海 裕之
エクソソームと疾患バイオマーカーの関係
疾患において、エクソソームは、疾患バイオマーカーとして利用される可能性があります。例えば、癌細胞の分泌するエクソソームには、癌抑制遺伝子が抑制されるマイクロRNAが含まれているため、癌の診断や治療に役立つ可能性があります。
エクソソームと組織修復の関係
エクソソームには、細胞増殖や細胞分化に関与する成分が含まれているため、組織修復に役立つ可能性があります。また、心筋梗塞などの際に分泌されるエクソソームは、心臓再生に関与しているとされています。
エクソソームと美容の関係
エクソソームは、最近では美容効果に関しても注目を集めています。その理由のひとつは、エクソソームがコラーゲン生成に深い関わりを持っているためです。
エクソソームとコラーゲン生成の関係
コラーゲンは、肌のハリや弾力を保つために不可欠なたんぱく質です。しかし、加齢や紫外線などの刺激によって、コラーゲンの生成量は減少してしまいます。ここで、エクソソームが登場します。
エクソソームはコラーゲン生成を促進することが知られています。具体的には、エクソソームがコラーゲンの合成に関わる細胞を活性化することで、コラーゲン生成を助けるとされています。
このため、エクソソームを使った美容法が注目を集めているのです。
参照元:藤田医科大学
エクソソームと肌の関係
エクソソームは、肌細胞の新陳代謝を促進する働きも持っています。新陳代謝が促進されることで、老廃物や不必要な角質が排出され、肌のターンオーバーがスムーズに進みます。これによって、肌は健やかな状態を保つことができます。
また、エクソソームには抗炎症作用があることがわかっています。炎症が起こることで、肌荒れや肌トラブルが発生することがありますが、エクソソームは軽度の炎症を抑える働きを持っているため、肌トラブルの改善にも効果が期待されています。
エクソソームと化粧品の関係
エクソソームが美容にもたらす効果に注目が集まり、最近では化粧品業界でも使用されるようになってきました。
エクソソームは、細胞内で生成され、外部に放出されます。このエクソソームには、細胞の情報を盛り込んだ脂質膜が存在します。脂質膜は、細胞膜と同じ構造をしており、そのためターゲットとする細胞の中に取り込まれやすいという特長があります。
エクソソームには様々な効果がありますが、特に注目されるのは肌へのアプローチです。
肌は、外部からの刺激や年齢とともに劣化します。この劣化は主に、表皮のバリア機能の低下や、真皮層のコラーゲン量の減少が原因です。エクソソームには、細胞伝達物質や成長因子、脂質やタンパク質などが含まれており、これらが肌の機能改善に働きかけます。例えば、エクソソームに含まれるセラミドは、肌の保湿力を高めたり、肌を強化する効果があります。
化粧品業界でも、エクソソームを使用した製品が開発されています。
まとめ
エクソソームは、先進的な情報伝達機能を持った細胞外小体であり、疾患バイオマーカーとして利用される可能性もあります。また、組織修復に役立つ可能性もあり、エクソソームは美容にとって非常に有益な成分であることがわかります。今後、エクソソームに関する研究が進むと同時に、エクソソームを活用した新しい美容法の活用が広がっていくことでしょう。
記事監修
点滴療法研究会マスターズクラブ(会長:国際統合医療教育センター所長・元杏林大学教授 柳澤厚生)は最新のエビデンスに基づいた点滴療法を提供する医師・歯科医師・獣医師を会員とするグループです。
欧米では科学的に根拠のある様々な点滴療法が代替統合医療・アンチエイジング医療の現場で広く行われています。高濃度ビタミンC点滴療法は米国国立衛生研究所(NIH)や国立癌研究所(NCI)が注目し、カンザス大学やジェファーソン大学では卵巣癌、子宮ガン、悪性リンパ腫の患者について臨床研究が進行しています。
キレーション療法はNIH代替医療部門でTACT Studyと呼ばれる狭心症・心筋梗塞に対する臨床研究を、グルタチオン療法は南フロリダ大学でパーキンソン病に対する臨床研究が行われています。キレーション療法は米国で年間100万件以上実施され、高濃度ビタミンC点滴療法は1万人以上の医師が癌治療に採用しています。
私たち点滴療法研究会マスターズクラブの会員は、最先端の点滴療法を提供できるように最新の医学情報を学び、常に患者様が安全に点滴療法が受けられるよう技術を磨いています。
※当サイトの情報は点滴療法研究会の全体で監修されており、会長医師一人の意見によるものではございません。
会長の医師プロフィール
柳澤 厚生
- 点滴療法研究会マスターズクラブ 会長
- 国際オーソモレキュラー医学会 会長
- 鎌倉元気クリニック 名誉院長
経歴
杏林大学医学部卒、同大学院修了。
医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。
詳しい経歴や医師の想いについては、医師のプロフィールのページをご覧ください。
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